民法では、土地の工作物の設置や保存に瑕疵があったことで他人に損害を生じさせた場合は、工作物の占有者は被害者に対し損害賠償責任を負うことが定められています。例えば、地震で隣家の屋根瓦が落ちてきて、駐車してあった車に傷がついた場合、損害賠償金として修理代を請求することになるでしょう。
本当に修理代は請求できる?
隣家の屋根瓦の設置方法に問題があった場合、屋根瓦の所有者である隣家の住人に対して傷ついた車の修理代を請求できる可能性があります。ただし設置に問題があったとしても、地震の揺れが強すぎたことで屋根瓦が落ちたのであれば、公平に損害を負担するという観点から一部賠償額が減額されることもあります。また、屋根瓦がしっかり固定されていたけれど、地震の震度がかなり大きく落ちたという場合には不可抗力と判断されて損害賠償請求が認められない可能性もあります。
瑕疵責任を問われれば賠償責任を負うことになる
熊本地震が発生した時、学生向けアパートの大学生が倒壊により亡くなるという痛ましい事故が起きました。この際、賃貸オーナーは、安全で生活に支障をきたすことない状況で借主に住まいを提供する責任があります。当然予見可能な地震(震度7程度)に耐えることができる建物であることが必要ですので、経年劣化や施工ミスなどにより、耐震基準が満たされていない建物が倒壊して入居者が被災した場合には瑕疵責任を問われて損害賠償責任を負うことになります。
ブロック塀を工事した業者へ損害賠償請求は可能?
震度6弱の地震により自宅のブロック塀が倒壊し、隣家の壁を壊してしまった場合なども同様に、設置や保存に欠陥や問題があったと判断された場合に損害賠償責任が生じます。ただしブロック塀に瑕疵があって損害賠償を払うことになったとしても、ブロック塀を工事した業者へ損害賠償請求を行うことはできるのでしょうか。ブロック塀の瑕疵が設置からの瑕疵であれば、工事を行った業者に対して不法行為の損害賠償請求を行うことが可能と考えられます。工事を行ってから経過年数が5年たっていないという場合、工事請負契約に基づいてブロック塀修理や損害賠償請求が可能でしょう。
損害賠償責任へ備える保険とは?
他人の財物を壊してしまった時や、他人にケガを負わせてしまった時の補償は「個人賠償責任保険」で備えることになります。約款上では地震免責が規定されていますが、例えば上記の例で周辺のブロック塀はほとんど無事だったのに自宅のブロック塀だけ倒壊してしまって事故を起こした場合などは補償されます。地震が原因ではなく保守管理に原因があったと考えられるからです。なお、東日本大震災で水濡れ被害を受けたとしてマンション上階の住民の保険会社に対する場損害賠償請求が認められたケースもあります。特にマンションの場合には、耐震性が比較的高く、5強程度のゆれでは免責条項の地震にはあたらないと判断されています。