地震が発生し、漏水を起こしたことで下の階の住民の家電製品や壁などに被害が出てしまったという場合、マンション住まいなら加入していることが多い個人賠償責任保険で補償されると思うかもしれません。しかし個人賠償責任保険は、地震による事故での賠償責任は保険の対象外ですので、個人賠償責任保険からは支払いが出来ません。
下の階への補償は何で支払われる?
地震による漏水は天災ですので、誰が悪いということではありません。そのため、賠償責任は発生しませんので賠償責任として支払われる保険はありません。この場合、被害者が地震保険に加入している場合は補償の対象です。マンションは地震に強いと思いがちですが、水漏れについての補償についても考えておく必要があります。
地震による漏水が免責にならなかったケースも
通常であれば建物に関係する損害保険は、地震で生じた損害は免責となっており支払い対象から外されることになります。しかし東日本大震災でマンションに生じた漏水事故に対して、東京地方裁判所は2011年10月20日、保険会社に保険金の支払いを命じたという例もあります。
・東日本大震災による漏水
漏水事故が起きたのは、東京都杉並区の1982年に新築された鉄骨鉄筋コンクリート造9階建てのマンションで、3.11東日本大震災により杉並区内は最大震度5強を記録し、6階住戸にある電気温水器の配水管が亀裂して水漏れ事故が発生しました。損害の賠償は5階住戸の持ち主と賃借している住人から6階の住戸の所有者である住人に対して請求されましたが6階住人は個人財産総合保険に加入しているものの保険金が支払われないことから賠償を拒否しました。
・裁判所に提訴した結果
保険会社は地震で生じた事故については保険金支払いの対象外にしていましたが、5階住民らは6階の住人と保険会社を相手取って東京地方裁判所に提訴しました。住人に対しては計140万円あまり、保険会社は賠償原資となる保険金の支払いがそれぞれ求められました。東京地裁は主張をほぼ認める形となり、6階の住人は約110万円の損害賠償、保険会社は保険金の支払いが命じられました。
・裁判所の見解は?
本来であれば1982年以降に新築されたRC造の建物のマンションは耐震性が高いので、例え震度5強の地震が起きても被害は生じないはずだとしています。しかし6階住戸の電気温水器は1994年製のものでメーカー点検は2007年に受けていたようです。配水管の経年劣化が進み、瑕疵によるもので亀裂が発生したと見なされました。
震度5強程度は免責対象ではない?
裁判所は、免責の対象である地震とは、戦争、噴火、津波、放射能汚染と同じレベルで巨大かつ異常な場合、想定される危険範囲を超えた大規模な地震に限定されるべきだと述べて折り、震度5強程度の地震は免責対象にならないとしています。
地震保険に加入しておくと安心
地震による漏水被害は、このケースのように裁判を経て賠償請求が可能になるケースもあります。しかし一般的には保険では免責とされていますので、補償されません。自分で地震保険に加入しておくことで補償されますので、賠償請求しなくても補償してもらえる形を取っておくことが良いでしょう。