熊本県で2016年4月16日に発生した地震により犠牲になった人たちの数は、2016年9月8日段階で関連死43名、直接死を含む犠牲者は98名となっています。本震発生直後の4月17日の段階で亡くなったことが確認されたのは41人。
死因は圧死が20人、その疑いを含める窒息死が10人となっており、どちらも倒壊家屋の下敷きになったことによると見られています。家屋が倒壊したことで亡くなった人のうち、半数近い人の家屋は耐震基準が改正される前に建てられた建物だったこともわかっています。
住宅の耐震化の現状は?
今後懸念される南海トラフ地震などの巨大地震が発生した場合の備えについては、日本全体の課題として取り上げられている状況です。住宅の耐震化、災害危険箇所の洗い直しなど様々な対策が必要になっている状況です。
耐震基準の見直しの状況
建物の構造については、最低限の基準を設定した建築基準法は1950年に制定されました。背景にはその2年前に発生した最大し震度6が観測された内陸直下型の福井地震があります。耐震基準を見直し木造住宅については床面積に応じて必要壁量などを規定しました。さらに1978年に宮城県沖地震が発生したことを背景に1981年に耐震基準を大きく見直ししています。そこでも必要壁量の強化などが盛り込まれました。
旧耐震基準と新耐震基準の違い
それまでの旧耐震基準は、震度5強の中規模地震が発生した場合でも建物に損傷がほとんど出ないことを基準としているのに対し、新耐震基準は震度6強や7の大規模地震でも倒壊や損傷しないことが求められるようになりました。今回の熊本地震で犠牲になった人たちの倒壊家屋は新たに耐震基準が見直される前のものでした。ただし、新耐震基準が厳格化された2000年以降に建築された建物でも倒壊の被害が発生しています。
新耐震基準は安心できない?
建築物が存在している期間に一度は遭遇する可能性のある地震動に対して、倒壊や崩壊する危険性がないことを求めているものが新耐震基準です。今回の熊本地震は4月14日と16日に震度7を観測する地震が発生し、さらに震度6強の地震が2回、震度6弱の地震は3回発生しています。新耐震基準はここまで度重なる地震に対しての基準として設定されていないため、複数回大きな地震が発生すれば新耐震基準でも耐えられなくなる可能性は十分にあることを立証する形となってしまいました。
家屋の倒壊に対する対策はどうすれば良い?
自治体の規模が大きければ耐震改修を住民に働きかける予算や職員の確保も比較的容易でしょう。しかし小規模の自治体になると人員や予算が不足することで実施することが難しいと考えられます。過疎化が進む農村部などの耐震化促進のためには、居間や寝室の改修だけでも支援するといった生活スタイルに合わせた補助制度の整備や、地域ぐるみで防災意識を向上させる取り組みが必要となるでしょう。また、個人でも地震保険など自分でできる備えを確保するなど、防災意識に併せて検討していくことが必要と言えるでしょう。