英アングリア・ラスキン大学やブラジルの地震研究機関の研究チームなどが発表した論文の中に、大地震が発生する前に起きた動物たちの行動の変化についての解説があります。
2011年に記録された映像は、南米・ペルーにあるヤナチャガ・チェミレン国立公園の様々な場所に設置された動体検知カメラによるもので、同年8月24日にペルーのコンタマナで発生したM7.0の大地震の前に見られた動物の映像を分析しています。
大地震発生前の動物たちの動き
動物たちの動きの中で最大の変化が見られたのは、地震発生日から23日前にあたる8月1日で公園内に生息する動物たちが慌しく移動する姿がカメラに5~15件ほど記録されていたようです。
その次に動物たちが活発に動いている姿が確認されたのは、地震の8日前である8月16日でこの日を境にしばらく山ネズミ等のげっ歯動物は完全に姿を消したとのことでした。
この大きく動物が移動した2日の間は動物たちの移動は活発に行われず、撮影された動物の姿も5件以下という少なさだったのです。
さらに地震の直前の1週間のうちカメラに写る動物の姿は激減し、1週間のうち5日間は全く動物の姿が見られなくなっていました。
地震発生前にイオン層に乱れが?
動物たちの映像を分析する一方、研究チームは震源地周囲の超低周波電波データも解析してこの不思議な動物たちの行動と何か関連はないのかを研究したそうです。
電波データを調査していくうちに、地震発生2週間前から空中イオンと自由電子が増加しており、電波に影響を及ぼしたことで上空のイオン圏は乱れが起きていたことがわかっています。
イオン層が特に大きく乱れた日は地震発生の8日前であり、動物たちが2番目に大きく移動した日と同じでした。
イオン層の乱れはなぜ起こる?
地震発生前に地殻変動が起こり、地表から大量に陽イオンが放出されることに起因していると考えられています。
大気中の陽イオンは動物たちに大きなストレスを与えることで、大移動など異常行動を起こす原因となっていると考えられます。
セロトニン症候群とは?
陽イオンが影響して血中のセロトニンが増加し、興奮状態になったり落ち着きを失い思考と行動に混乱を招く症状が現れるものがセロトニン症候群です。
このセロトニン症候群こそが、動物たちの大移動の原因だと研究チームなどは説明しています。
国立公園に設置されたカメラは起伏に富んだ標高900mという場所であったことで、陽イオンの濃度が低い低地へ動物たちが移動したため姿を消したと考えられているようです。
人にはセロトニン症候群は起こらない?
陽イオンによるセロトニン症候群は人にも起こるはずなのですが、感受性が鈍っていることからか体調に異変を感じたとしても地震の前触れとは考えられないのかもしれません。
それに比べて動物たちは異変に気づけば躊躇することなく行動を起こすことが確認されたということになります。
特にネズミなどのげっ歯類は感度がとても高い動物だということで、大移動により完全に姿を消したのでしょう。
動物の大移動は地震の前触れかもしれない…
もしも動物の大移動が見られたら、それは地震発生の前触れかもしれませんので自身も何か体調に異変はないかを確認してみましょう。
そして動物による大移動などの行動は、神秘的な地震を予知した動物の行動ではなく、ストレスを感じていることに対する行動だということを理解しておきましょう。