「貸家建付地」は賃貸のマンションやアパートの敷地のことです。自分が所有している土地に家屋を建てて人に貸している場合の土地を貸家建付地といいます。自宅や駐車場などとして使用している土地よりも相続税の計算上評価が低くなります。
借家人には借地借家法上の「借家権」という権利を持っています。そのため貸主の都合だけで退去してもらうことは難しいのです。このような土地は借家人に立ち退いてもらうための費用がかかりますので、売却する際には更地価格で売ることはできません。そのため、以下のように評価額を求めます。
自用地評価額―自用地評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合
賃貸割合とは?
集合住宅が建っている場合には、空室部分には借家権はありません。貸している部分の床面積を全体の床面積で割った賃貸割合を掛けて評価を減額します。賃貸割合の計算上、継続的に賃貸していた部屋が一時的に空室だったと言う場合には賃貸していたとしても良いことになっています。
継続的に賃貸されていた独立部分で、次のような場合において課税時期(相続の原因発生日や贈与による財産取得日)に一時的に空室となっていたと認められるものについては課税時期にも賃貸されていたことにできます。
・独立部分が課税時期前にも継続して賃貸されていた
・賃借人が退去した後、速やかに次の賃借人の募集が行われている
・空室期間中、他の用途に供されていない
・空室期間が一時的な期間である
・課税時期後の賃貸が一時的なものではない
借家権は相続される?
借家権の権利は賃借人に相続人がいなければ、事実婚の配偶者や養子といった内縁関係の人にも引継ぎされることが認められています。これは借地借家法による住んでいる人の権利を守るためのもので、特別縁故者として借家権の引き継ぎが可能になっています。
例えば被相続人が配偶者と別居していたとします。被相続人と同居していた内縁の配偶者に対して、相続人である配偶者が住居の明け渡しを求めた場合、裁判所は権利の濫用として内縁の配偶者の居住権を保護するというケースも多く見られます。
ただし借地権の場合にはこのような特例はありませんので、もしも内縁関係のある人に借地権を残したい場合には遺言書や名義を書き換えるといった手続をしておく必要があるでしょう。
住む人は優先して守られる
ただ賃貸しているだけといっても借家人の住む権利はしっかりと法律で守られています。そのため売却などを検討する際には立ち退いてもらうための費用が必要になるでしょうし、権利として例え内縁者でも引き継がれるものであることを認識しておく必要があります。