金融機関で住宅ローンを組む場合
住宅ローンなどの借入金を利用する際、火災保険に質権を設定することを要求されることがあります。この質権を火災保険に設定すると、保険証券は金融機関が預かることになります。質権を設定すると、住宅ローンが完済されない限り金融機関の同意なく契約を変更したり解約したりはできません。
質権設定とは?
質権は、お金が返済されるまでの間、お金を借りる側が貸す側に物品や権利などを担保として預けておき、返済できなくなった場合は担保を売却して優先的に弁済が受けられる権利です。
もし火災などの事故が発生した場合、保険会社が保険金を支払う相手は保険契約者ではなく質権者である金融機関です。ただし金融機関が受け取ることができるのは、住宅ローンの残っている債務だけで保険金の残りは家の所有者に支払われます。住宅ローンに複数の債権者がいる場合は、順位を付けて質権を設定することもあります。順位の高い質権者に対して優先的に保険金が支払われます。
質権設定が必要な理由
結論から先に言うと、質権設定があってもなくても、金融機関は保険金を請求できます。
住宅ローンが残っている建物には抵当権が設定されています。お金を貸した側である金融機関などは借りる側の建物に担保にするための抵当権を設定します。
火災が起こる前なら金融機関はその抵当権から住宅ローンの残債回収が可能です。しかし万が一、火災で建物が焼失した場合には抵当権を実行して競売にかけることができなくなります。
そのため質権を設定しておくと、保険金としても請求権が発生するため、火災保険金となって住宅ローンを回収できるメリットがあるのです。
質権は必ずしも行使されない
実際のところ火災が発生しても、小さな規模の場合は金融機関が質権を行使せず建物の所有者が保険金を受け取るケースもあります。仮に全焼したとしても質権で保険金を回収しないケースもあります。
仮に住宅ローンを3千万円で組んで同金額の火災保険に質権を設定します。その後、2千万円を返済した時点で全焼しました。この時、金融機関がローンの残債1千万円に対して質権で回収することもできます。しかし質権を行使しなければ残り1千万円にかかる利息が得られたはずです。それなら火災保険金は全て建物の所有者に渡して、新しく建てた家に1千万円の抵当権を設定すれば融資が継続できます。
火災が起きる前と状況は同じですが、建物の所有者にも金融機関にとってもメリットが大きく信用できる顧客の場合は、質権を行使しません。そして行使しない質権であれば設定する必要もなく、質権の設定を求めない金融機関も増えつつあります。