もし平日の昼間に地震が発生したら、勤務中にケガを負う人が増える可能性があります。もし業務を行っている時や通勤途中に地震が発生し、ケガを負った場合には労災保険から給付がされるのでしょうか。
原則として労災給付はないけれど…
地震で被災した場合は業務起因性が否定されますので、原則として労災保険からの給付はされないことになります。
しかし一定の危険な状態が存在した場合、業務起因性が認められて労災が適用となる判断がされることもあると考えられます。
実際には事案ごとに判断は異なりますので、地震発生の時にケガを負った場合は一律での判断ではなく地震が発生する前の状況も勘案して検討することになるでしょう。
業務災害として認められるケースとは
業務遂行中に地震が発生し、建物が倒壊したことなどにより被災した場合は、作業方法、作業環境、事業場施設の状況など危険環境下の業務に伴う危険が現実化したと認められることで業務災害になります。
次のようなケースの場合には、業務災害と認められると考えられますので確認しておきましょう。
・作業場が倒壊したことによる災害
作業場で建物が倒壊したことで被災した場合、建物の構造上の脆弱性が認められれば業務災害と認められるでしょう。
・作業現場で倒れたブロック塀による災害
ブロック塀に構造上の脆弱性が認められた場合は業務災害と認められるでしょう。
・事務所が土砂崩壊で埋没したことによる災害
事務所に隣接する山の形状は急傾斜となっており、表土も風化でもろくなっていたというような不安定な状況にあり、崩壊の危険が常に有していた場合での土砂崩壊による埋没であれば業務災害と認められるでしょう。
・交通機関が受けた落石による災害
崖下を通過する交通機関の場合は、常に落石等による災害の危険を有していますので業務災害と認められるしょう。
・業務で高速道路を通行中に道路が崩壊したことによる災害
高速道路の構造上の脆弱性が現実化したものと認められ、危険環境下で被災したため業務災害と認められるでしょう。
・屋外へ避難する際の災害
業務中に事業場に危険な事態が生じたことによる避難で、避難行為が業務に付随する行為であれば業務災害と認められるでしょう。
通勤災害と認められるケース
業務災害と同じく原則は労災保険の適用対象にはなりません。ただし通勤に通常危険が伴っており、それが現実化したものと判断されれば通勤災害と認めらます。
・通勤途上で歩道橋を渡っている際に転倒
歩道橋を渡っている時の転倒は、通常伴う危険が現実化したものであると判断されるため通勤災害と認められるでしょう。
・通勤途上で列車利用中に脱線が起きたことによる災害
利用中の列車が脱線することは通勤に通常危険が伴っているものが現実化したことによると判断できますので、通勤災害と認められるでしょう。
労働災害と認められるケースの確認を
地震での被災は原則労災扱いにはならないのですが、全てが認められないわけではなくケースによっては認められることがあります。先に述べた事例などを参考にしながら、危険を回避するための策も講じておくことが必要です。